異様な商店街にて2
3人で恐る恐る踏み入れたコニシ商店。入った瞬間に避ける間もなく何かの衝撃で吹っ飛ばされ、意識を取り戻したときには目の前に小西先輩がいた。いや、先輩モドキがいた。本物の先輩のはずがない。だって、先輩はもう……
俺に「好き」と囁きキスをして、そして今、俺の体をまさぐっているのは一体誰なんだ。ずっと望んでも得られないであろう、そして今後も叶うことはもうなくなった、と思っていたことを今まさに現実のものにしているこの小西先輩をかたどった何か。その何かがズボンを脱がし俺のものをしごき始める。陽介はこみ上げてくる快感を堪えるため唇を噛んだ。
「……あんた、誰だ?」
「誰だって、私よ、小西早紀。忘れちゃった?花ちゃん」
当たり前のように答えてくる。陽介は声を荒げ、
「うそだ!小西先輩は、こんなことはしない……」
「あら、私だって好きな人にはキスしたいし、それ以上のこともしたいと思うわよ?」
「だから、嘘なんだよ……」
俺が先輩に寄せていた好意と、先輩が俺に向けてくれた好意は質が違う。俺は先輩が好きだったけど、先輩は違った。いや、自ら認めるのはきついものがあったが、そもそもあのやさしさが本当に好意だったのかどうか……
「ふうん、花ちゃんの小西先輩はそういう人なんだ」
モドキがくすりと笑う。その手は陽介のものをしごいたり揉んだりと弄んだままだ。口から思わず声が漏れる。
「んっ……く……っ」
陽介の反応を弄ぶように、今度は人差し指で鈴口をいじくりまわす。先走り汁がねちゃっと音を立てた。
「くぁ……っは……」
「好きじゃない人とはHしない人って?」
その声にはあざけりが滲んでいた。
「ねえ、私、昔好きな人がいて、家を飛び出して追いかけていったことがあるんだけど、聞いたことある?」
……確かにその噂なら聞いたことがある。モドキがさらに聞いてくる。
「その人と同棲しててさ、何もなかったと思う?」
「そ、それは……」
「私と花ちゃんが出会ったのって、ここ稲羽市だよね?私、なんでせっかく好きな人のところにいたのに、ここに帰ってきたんだろうね?」
答えられなかった。まともに目を合わせられない自分を見て、モドキの嘲笑の響きが深まる。
「好きだ、この人とならって飛び出したものの、相手には遊びでしかなくて散々もてあそばれた挙句に結局捨てられただけだって考え、少しでも頭の片隅によぎったこととかないの?」
「……やめ……」
「私がジュネスなんかでバイトして親に喜ばれてると思ってた?私自身が好きでバイトしてるとでも?そこまでしてお金を欲しがった理由考えたことある?」
「……やめて、くれ……」
「逃げる場所がなくてあんな夜な夜ないろんな男に強姦される生活じゃなくて、誰にも頼らず生きていきたいっていうの、私にとってものすごく切実な願いだったって知ってた?」
「やめてくれ!……先輩のそんな話、聞きたく、ない……」
モドキが鼻で笑う。
「都合の悪いことは聞きたくないって?そんなんだから本体にうざいって言われるのよ」
モドキは手に握りしめている一物の上に顔を近づけると口を開いた。とろっとした唾液が流れ出るとそのまま亀頭に落ちていく。それを潤滑油に、一気にしごくスピードを速めてきた。陽介は突き上げてくる快感を避けようと、おもわず腰をくねらす。が、陽介のささやかな抵抗などものともせず、モドキは手を上下にしごき続ける。
「う、くぅ……っ!」
「うざいって言葉、単なる冗談だと思ってた?」
涙目の陽介を見つめながら、顔を近づけてきたモドキが囁いた。モドキの手が絶え間なく刺激を与えてくる。聞きたくない言葉からの逃避ゆえかもしれないが、一気に快感が高まってきた。モドキに値踏みされるような目つきで見つめられていると思いながら、
「……ん、く、ああっ!!……」
陽介は体が強張らせたかと思うと、先から白濁液を飛びち散らせた。
果てて荒い息を吐いている陽介に、モドキの声が降りかかる。
「花ちゃんの、俺は、俺だけは先輩の良さ知ってますみたいな態度、ホントうんざり……」
冷笑を浮かべ、指にべったりと絡みついた白濁液をべろりと舐めた。
「も、う、許し、て……っ」
陽介は半泣きで懇願した。さっきからずっと騎乗位でヤラれているが、根元をきつく縛られているので射精ができない。容赦なく押しよせてくる快感もここまでくると苦痛が勝る。
「私が泣いて許してって言ったときは、みんなにやにや笑ってみてるだけだったわ……」
モドキは、動きを止めないまま言う。ぬめった膣が吐き出しどころを失っている肉棒を責め立てる。
「く、苦し……も、おかしく、なるっ……」
「なればいいのに……ねえ、なってよ」
モドキの声が切実を帯びる。
「ねえ花ちゃん……私のことが好きなんでしょう?……だったら、私のために狂ってよ……」
もう言葉をまともに紡ぐのもままならなず荒い呼吸を繰り返している陽介の唇を親指でなぞりながら、自分の唇を近づけてきた。
俺に「好き」と甘い言葉を囁き、キスのたびに舌を絡ませてきて、騎乗位で喘ぎまくっている小西先輩をかたどった何か。耳を、口腔を、下半身を犯され続け陽介の意識が朦朧としてくる。
「好きよ……」
先輩が囁いてくる。
「ほ、ホン、ト……に?……んっ」
口と口が触れ合う軽いキス。先輩の唇は暖かく柔らかい。
「……お、おれ、も、先輩の、こ、と、ずっと……っ」
「知ってるわ……」
俺の頬に手を添えて、また唇を落として今度は舌を絡ませてきた。ねっとりとした舌が俺の口腔を這いまわる。
「んんんっ……」
「ね、花ちゃん、いって……」
「い、イキ、たい……っ」
「一緒に、逝ってくれる……?」
先輩がほほ笑んでくれてる。俺に。
(俺は……ただ、そんな風に先輩に……いつも、笑っててほしかった、だけ――)
陽介はまとまらぬ思考の中そんなことをぼんやりと考え、そして、そのまま意識を手放した。
万一このまま死んじゃったりしたら、死因って腹上死になるの、これ?まだ若いのに……