放課後の教室
放課後の教室。ガラッと扉を開けると、席に座っている花村が目に入った。ちょうどいいことに花村一人である。千枝は近づくと声をかけた。
「花村」
「ん、なに?」
こっちを向かず返事をする花村。千枝は唇をちょっと噛みしめると、
「話が、あるんだけど……」
「話って?」
やっぱりこっちを見ようとしない。千枝は泣きたくなった。
「……ねえ、そんなに私を見るのも嫌?」
花村は答えない。
『顔も胸も何もかも雪子にはかなわない。誰も自分を女としてみてくれない。男勝りのようにふるまうのは、ただそこから逃げてただけ。ワタシは女として魅力がない……』
あの時のシャドウのセリフが蘇ってくる。千枝は自嘲気味に笑う。
「……そうだよね。雪子を助けるなんて、一人で勝手に突っ走った挙句にさ……」
『ねえ、二人とも見て見て。アタシのここ、こんなに使えるのよぉ』
「あんな……あんなタコのような足の化け物にいいようにされた私なんて、見たくないよね」
「……違う」
花村が言った。依然向こうを向いたままだ。
『見ないでぇだって、白々しい。ホントは見せたいくせに。自分はちゃんと女として使えます、って証明しないとね。ほらぁ!』
「そうよ。化け物相手に感じまくった女なんて見るのも触るのも気色悪いだけだよね!」
「違う!」
「じゃあなんでこっち向いてくれないのよ!本当はそう思ってるんでしょ!?」
「違うって言ってるだろ!!」
「じゃあ、なんでよ……なんでこっち見てくれないの……」
花村は立ち上がると、千枝の方に体を向けた。が、目線はまだ横を向いている。無言の時間が流れた。
「……あんとき、」
ぽつりと花村がしゃべりだす。
「里中がその、アレに……やられてるとき、俺……小西先輩のことが頭に浮かんだんだ。ひょっとして、先輩も、こんな風にやられたのかなーって……」
言葉を紡ぐのは辛そうだったが、花村は続けた。
「そんな風に想像したらさ、俺、あんな時なのにすげー興奮してんの。帰ってからもそればっかり頭に浮かんで……それを、オカズにして……先輩、殺されてんのに……はは、サイテーだろ?」
花村はこっちを見てちょっと笑った。千枝には泣いているように見えた。
「里中の顔をみると、そんな自分の汚さを思い知らされてきつかった」
里中を見れなかったのは自分が弱かったせいだ。だから、里中は何も悪くない、俯いてそう言葉を続けた。
千枝はぺたんとその場に座りこんだ。
「おい、大丈夫か?」
「よ、かった……あんなの、雪子いないし、誰にも相談、できないし、」
自然と涙が出た。
「は、花村は、全然私を、見てくれない、し……月森君、は、親切だけ、ど、まだ、そこまで親し、くないし……も、どうしていいか、わから、くて、し、死んじゃったほうがいいのか、な、とか、」
泣きじゃくっているので、うまく口が回らない。
「で、も、そう、したら今度は雪子が、って」
「ごめん、悪かった。俺でできることなら何でもするから」
花村がかがみこんで、千枝を安心させるようにと思ってだろう、抱き寄せるように千枝の肩に触れてきた。
「んっ……!」
千枝は思わず上ずった声を出した。
「お、俺、変なとこ触ってないよな?」
焦って手を離す花村を見上げる千枝。さっと花村の表情が変わった。あの時の、シャドウに嬲られている私を呆然と見ていた花村の顔がそこにある。
「……私……」
自分の息が上がってきてるのがわかる。……大丈夫だろうか。
「嫌だったのに、嫌だったはずなのに……あの時、確かに、感じてた自分がいて」
こんなことを言い出したら本当に拒絶されてしまうかもしれない。そうは思ったが一度しゃべりだしたら止められなかった。
「私も、帰ってからも体が、アレを……忘れてくれなくて」
花村は息をのんでこっちを見つめている。
「自分でしても、うまくイケなく、て……だから、」
は、と荒い息を吐くと、千枝は花村に縋りついた。
「お願い、助け、て……」
千枝は懇願した。
「苦しい、の、こんなの……花村にしか、頼めない」
花村は、縋り付く千枝の手を振りほどかなかった。
くぐもった声と荒い息遣いだけが聞こえてくる放課後の教室。
千枝は自分が来ていたジャージで腕を後ろに縛られた格好で、後ろから前に伸ばしてくる花村の手で乳首を責められていた。
「んんんっ……」
口にはハンカチを押し込まれた状態なのでうまく声が出ない。身をよじろうにも後ろから羽交い絞めなので、満足に動けない。ぞわっとくるような快感が何度もやってきて、うまく足にも力が入らない。自然、後ろにいる花村にもたれかかるような格好になった。
「あんときも、こんな風に、ここ弄られて感じてたよな……」
花村は言いながら千枝の乳首をくりくりつまんだり、ひねったり弄ぶ。敏感なところを執拗に弄られ続けて、千枝はもう気が変になりそうである。目元に涙がにじんできた。
「俺たちに見せつけるように、目の前まできてさ……」
その時の状況を思い出しているのだろう、しゃべってる花村の声もだいぶ上ずっている。自分の耳元にかかる息が熱い。
「涙を浮かべて、イキながらこう言ったんだよな」
言いながら、右手で千枝の口の中に押し込まれていたハンカチを抜きとった。
「見ないでぇ……っ」
「そうそう……」
前回の言葉まんまの再現に気をよくした花村は、そのまま千枝を床に押し倒すと、下着をはぎ取った。すでにぐっしょり濡れた秘部があらわになる。
「すげーびしょびしょ……里中、お前エロすぎ……」
背後から興奮した花村の気配を感じる。……花村が、私で興奮してる……
「俺、何本も持ってないから1本で我慢してくれよ」
花村はそういうなり千枝の腰をつかむと突き入れてきた。
「んん、いい……っ!!」
「……くっ、締め付けきっつ……」
自分は……大丈夫だ。ちゃんと女してる……だってあの花村が、この私で欲情してる……昏い悦びを感じつつ、千枝は今日一回目の絶頂を迎えた。
世の花千枝を読んでていいねぇと思って自分で書いたらこんなだよ。
千枝の一人称、確か「あたし」だったと思うんですけど、「あたし」にするとなんか見にくい感じがして「私」になってます。私と書いてあたしと読む、をやればより千枝らしく読める?