「リンダです」
「入って」
 扉を開けてマルスの部屋に入ったとき、そこで繰り広げられていた光景にリンダはわが目を疑った。……いや、本当は呼び出されたときから薄々判っていたのだ。あのマルスが何の目的もなく人を呼び出すはずがない。
 目の前では裸で四肢を拘束され喘いでいる男とそれを犯している男がいた。マリクとマルスだった。リンダは唇をかみ締めると、
「お邪魔のようですので失礼します」
 一礼をして踵を返す。マルスはマリクを貫いていた自分のペニスを引き抜くと手早く衣装を正し、部屋を去ろうとするリンダに声を呼び止めた。
「待って」
「お二人の関係を見せつけるためにわざわざ私を呼んだのですか?」
 自分に近づいてきたマルスに対しリンダが言う。
「ああ、そんなつもりはなかったんだ」
 マルスは微笑むと、
「ただ、僕のお古でよければ君にあげようと思って、ね」
 リンダをつれてマリクの元へ行く。
 後ろ手に拘束されたままうつ伏せで上体をベッドの上に投げ出し、下半身をこちらに晒した格好のマリク。つい先ほどまでマルスが犯していた菊蕾は物欲しげにひくひくと動いていた。
 マルスはそばに転がっていた男性器を模したバイブをその穴に押し込むと、ぐりぐりとかき回した。マリクの下肢が振るえ、猿轡をかまされた口からもくぐもった声が漏れる。
「結構いい声で啼くだろう?」
「……どうして私なんかに、それも……”あげる”だなんて……」
 リンダはマルスに訊いた。その声は少しかすれていた。
「一言で言うと飽きちゃったから、かな」
 バイブを持った右手を動かしたままマルスはこともなげに言う。マリクは全身を汗ばませながら四肢をぴくぴくと振るわせていた。彼が実を動かすたびに足首を拘束している鎖が金属音を響かせる。くぐもった声も断続的に漏れていた。
 そんなマリクに目を離せないでいるリンダを見て、マルスはくすっと笑った。
「ただ君にあげるにあたってひとつ問題があるとすれば」
 言いつつ、左手に持ったバイブレーターのスイッチをオンにした。ヴヴ……という音を立てるとバイブ自身がうねりだす。雁の部分が腸の内壁、特に前立腺辺りを刺激するようにマルスもまた手を使って前後に動かす。そのまま続けていると、やがてマリクは上体をのけぞらし全身を打ち震わせ、そのまま弛緩したように倒れた。
 マルスはスイッチを切るといまだ肩で息をしているマリクをごろんと横にして仰向けにさせた。ベッド一部分がべっとりと濡れている。ペニスのほうは一度溜まったモノを放出したせいでいささか力を失っていた。
「実は彼、後ろじゃないとイケないんだよね」
 マリクを見下ろしながらマルスが言う。
「でも、解決策はもう見つけてるから」
 マルスはリンダにスイッチを握らせると彼女自身の指でスイッチを入れさせた。瞬間、マリクの体がびくっと振るえ、半分萎えかけたペニスがまたむくむくと硬度を増した。
「彼とセックスしてて自分がイキそうになったとき、これを使うといいよ。そうすれば一緒にイクのも思いのままさ」
 一緒にイクってなかなか難しいんだよね、そう言いながらマルスはスイッチに触れているリンダの指に自分の指を添わせ前後に動かす。
「ふ……ぐ……っ」
 そのたびにマリクは四肢を痙攣させ猿轡の奥から声を絞り出した。一度樹液を吐き出したペニスは、その亀頭の先からまた新たなぬめりを染み出させている。リンダはスイッチを握り締め唾を飲み込んだ。視線はマリクに釘付けである。
 マルスはリンダの耳元で囁いた。
「どうかな?君がうんと言いさえすれば、この声も、この身体も……全部、君のものだよ……?」

   
         


 ……それにしてもマリクの意思ってどうなってるんでしょうねぇ。
04/01/25 TOP