夜間の病棟

「あなたねぇ」
 上原小夜子はあきれた声を出した。
「やっぱりだめですか?」
 月森が言う。
「だめっていうか……あなた、彼女いるんでしょう?彼女に頼めば?」
「いや、さすがに彼女には頼みにくくて」
「彼女には遠慮しても、私にはいい訳ね」
「ナースですから」
「なによ、それ」
 小夜子はため息をついた。
「夜間の病棟、若い可愛い男の子から頼みがあると言われて話を聞いてみれば……」
 横目で見やれば、期待に満ちた表情でこちらを見ている男の子が目に入る。
「浣腸してほしい、だなんてね」
「よろしくお願いします」

 準備を整えた後の人気のない病室。小夜子は壁際に立たせると、
「ほら、脱いで。壁に手をついてお尻出して」
「こう、ですか?」
 若干恥ずかしそうにしながらも、言われたとおりにする月森。
「ふふ、自らお尻を出して恥ずかしくないの?」
 小夜子は笑いながら、ビニール手袋をした手ですっと軽く肛門の入り口を撫でた。
「んん」
 上ずった声がする。
「ちょっと触られたぐらいで声上げちゃって、何期待してんのかしら?」
 ワセリンをつけた指で入り口をぐりぐり揉みほぐしす。恐らくは我慢しているのであろう月森が、堪え切れず尻をくねらす。自身の息も荒くなってきているのを自覚する。つぷっと指を差し入れると、月森の体がびくっと跳ねた。
 ゆっくりと入り口を押し広げるように指を動かしていく。
「……っはぁ……」
「お尻、触られるの気持ちいいんだ?」
「そんなことは……ああっ」
 自分でしてるのか、彼女にしてもらっているのか、ここの感度は結構なものである。
「まったく、本番はこれからだってのに」
 弄っていた手を止めると、小夜子は浣腸器を手に取った。

「ほーら、入れるわよ」
 人肌に温めておいた浣腸器のチューブの先を肛門にあてがう。
「動いたらだめよ」
 そういうと、先端部分を挿入し注入していく。月森の体が強張ったが、体を動かすのは耐えている様子である。
 液が全部入ったのでそっと抜くと、月森の体がぶるっと震えた。
「……ん、っふあ……」
 小夜子は、そのままベッドの上に座ると下着もろともタイツを脱ぎおろし、足を広げた。月森がこっちを見る。自分の指で広げるとくちゅっという卑猥な音がした。
「ねえ、ここ舐めてちょうだい」
 お願いという名の軽い命令。月森が逆らいもせずおずおずと這い上がってくる。うずくまる格好をすると舌を這わし始めた。小夜子が言う。
「そんな恰好じゃだめよ、ほら、もっとお尻突き上げて」
 舌は動かしたままお尻が上がっていく。小夜子は自身の顔に自然と笑みが浮かんでくるのを感じた。

 ぴちゃぴや、くちゅくちゅと、舌を這わす音だけが部屋に反響する。
(そろそろ効いてきたのかしら)
 目をつむりながら舌を動かしている月森だが、
「……っ……」
 時折、動きが止まる瞬間があった。見ると顔が赤い。
「舌がお留守になっているわよ」
 懸命に舌を動かそうとしているようだが、やはり止まる。体がぶるぶる震えてきている。
「どうしたの。出したいの?」
「はい……」
 唇をかすかに震わせた状態で月森はうなずいた。
「こらえ性のない子ねぇ。まだ5分も経ってないじゃないの」
 そういって、アナル栓を取り出すと月森の前に差し出した。小夜子が月森に囁く。
「もうちょっとこの状況を楽しみたいなら、自分でコレ、入れなさいな」
 逡巡しているようだったが、結局入れることを選択したようで、手を伸ばしてきた。小夜子はさっと手をよけた。
「ただで貰おうなんて虫が良すぎるでしょう?せめて、可愛くお願いして私も楽しませてちょうだい」
 やり取りをしている合間にもどんどん迫ってくる。月森は、
「し、しまりのないお尻の穴をアナル栓でふさぎたいので、どうか、入れるところ、を見て、ください……」
 苦しそうに、それでも小夜子が悦びそうな言葉を選んで紡いだ。小夜子は妖艶にほほ笑むと、もう一度差し出す。月森はそれを受け取ると、自分でお尻の穴にそっとあてがうと押し込んだ。
「んああっ……」
 月森の体がわなないた。入れる行為で軽くイッたようである。
「ふふ、まったく、勝手に一人で感じてイッちゃって……見られながら栓をするのが、そんなに気持ちよかったの?」
 小夜子は、淫靡な表情を浮かべると、
「ほらさっさと舌動かして。私のほうは、まだ全然イってないわよ」
 脂汗を浮かべながら、けなげに奉仕してくる男の子。月森の舌とは別のところからこみ上げてくる疼きに小夜子も体を震わせた。

「8分か。ま、こんなものかしらね」
 小夜子が言った。
「気持ちよかったです」
 月森が馬鹿正直に返事をする。
「顔を見ればわかるからいちいち言わなくてよろしい」
「はい」
「あんまりやりすぎるとお尻がバカになるから、ほどほどにしておきなさいね」
「肝に銘じておきます」
 顔は悪くない。むしろ、いい方と言っていいだろう。時折見せるあどけない笑顔などは可愛い範疇に入る気がする。それなのに……
「あの、今回は急だったので仕方ないと思うんですが、次やるときはぜひ注射器で……お願いしたいです」
 もじもじと照れながら言うセリフがそれか。小夜子は今日一番のため息をついた。

 エロゲーだったら、これ絶対よこしまな好意がみだらな行為に進化?していくだろうに、などと考えながらゲームしてました。ナースさん、気が強くていいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です